日常の診療で定期的に行っている血液検査の項目のなかで、最近、とみに重要性を増しているグループの一つが電解質(ミネラル類)です。
それは、超高齢社会のもとで、高血圧それもより重症例が増えているのと、慢性腎臓病(CKD)の増加によるものであると、私は考えています。
とくに血清カリウムの動向、とくに高カリウム血症には注意を要します。
高カリウム血症といえば、高血圧症の治療で降圧剤であるRA系阻害薬とミネラルコルチコイド(MR)受容体拮抗薬の併用で生じやすいので、副作用の早期発見が必要です。
またCKDステージが進むと代謝性アシドーシスが起こります。そうなると血清カリウム(K)値も上昇するため、定期的なチェックが必要です。
腎機能低下により腎臓からの酸排泄量が低下すると、血液中の重炭酸イオンが消費され、アニオンギャップ(AG)正常の高塩素(Cl)性代謝性アシドーシスとなります。
また、さらに腎機能低下が進行し、硫酸やリン酸などの不揮発酸の排泄低下が加わると、AG開大性の代謝性アシドーシスも合併します。
このように代謝性アシドーシスでは、基本的の高カリウム血症を来します。
やや特殊な病態として尿細管性アシドーシス(RTA)があります。RTAの中でも(Ⅳ型)は高カリウム血症を来しますが、下痢やRTA(Ⅰ型、Ⅱ型)の場合、下痢の場合と同様、低カリウム血症を来します。
RTAでは、血液中の重炭酸イオン濃度が低下し、塩素イオン濃度が増加しますが、それ以外の陰イオン(アニオン)に変化はないので、AG(アニオンギャップ)は増加しないことが、他の代謝性アシドーシスとの鑑別に役立ちます。
RTA(Ⅰ型)は、遠位尿細管性アシドーシスで、この型が多いです。
骨からのカルシウム遊出、尿細管内クエン酸低下などにより腎石灰化を来します。
また、シェーグレン症候群などがこれに含まれます。
とくにシェーグレン症候群の患者さんで四肢麻痺が見られたら、低カリウム血症を疑います。
一般に、RTA(Ⅰ型)では、尿中へのナトリウム排泄が増加することにより、細胞外液量が減少します。
その状況に反応してアルドステロンというホルモンの分泌が増加することによって低カリウム血症がもたらされます。
低カリウム血症になると、筋脱力、四肢麻痺、尿濃縮力低下による多尿を呈します。
治療方法は、代謝性アシドーシスを補正するためクエン酸カリウムが有効です。重曹などの炭酸水素ナトリウムを1.5~3.0g/日を投与して、血清重炭酸イオン濃度を20mEq/L以上を目標にします。
(高円寺南診療所では痛風の患者さんが多いため、ウラリット®という尿アルカリ化剤を使用している患者さんが多いです。その理由は、痛風の原因が高尿酸血症であって、尿酸自体が不揮発酸であり、この酸の尿中への排泄を促すために重炭酸イオンによって、尿のアルカリ化をはかる必要があるからです。)
RTA(Ⅱ型)は、近位尿細管性アシドーシスで、ファンコーニ症候群などがこれに含まれます。
ファンコーニ症候群の原因は、重炭酸イオンの再吸収障害であり、他に低リン血症、汎アミノ酸尿症を来します。
このように、定期的な血液検査で血清カリウム濃度が高い場合、治療薬による副作用は無いか、腎機能が低下していないか、代謝性アシドーシスの状態に陥っていないかなど、そのつど検討しています。
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